K2に登ってきましたよ。
5日19:00〜観てきたわけですが、満員御礼。でもね、当日券も結構出てたみたいです。立ち見じゃなくて、椅子席で当日券あるのよ。先着順だそうなので、行ける人は挑戦したらいいかも。
私は2回席最前列。ステージ向かって左側。すごくみやすかったです。視界を遮るものがなく、表情までちゃんと見えたよ。途中で地震が来てびっくらしたけどね。舞台の2人はまったく動じることなく演技を続けておりさすがやなーと思いました。結構揺れたと思うよ、ステージだって。
ネタバレしないように感想を書きますと。2人の演技は本当に素晴らしかったです。テイラーとハロルド、2人の男がくさなぎさんと堤さんに重なるところがあってすごく自然。それから、ステージセットがかなり豪華なので、迫力満点です。音楽も好きだったな〜山の壮大な感じにぴったりでさ。それから、登山の専門用語がいっぱい出てくるので、少し勉強していったほうがわかりやすいかな。私はさっぱりわからなくて、名前を聞いても何をする道具なのかよくわからなかった。ただ「ああ、山に突き刺す道具がほしいんだな」とか「腰につけるやつが残ってるんだな」とか、ぼやーっとわかるような状態。
正直私は、山に立ち向かう登山家の気持ちはさっぱりわからないので(なんであんな危ないことをわざわざするのかさっぱりだ)彼らに感情移入することは出来ず、冷静に第三者として見ていました。2人の男の、ドキュメンタリーを見るような。そして恐ろしいのは、これが芝居だけの話ではなくて、現実に起こりうる話だということなのよね。K2の登頂成功者はエベレストよりもずっと少ないと後で知り、ぞっとしました。これがK2登山の現実なんだな、そんな気持ちでずしーーーんとしたよ。
「感動〜」って感じでも、「かなしい〜〜〜」って感じでもなく、ただただ呆然としてしまった。これが現実なんだなって。それくらい、本当にこの男たちが目の前にいるような気がして。人間の心の奥底の感情とか追い詰められたときの精神状態とか悟ったときの覚悟とか、いっぱい見せてもらって。会場は泣いてた人もたくさんいたんだけど、私はむしろ恐かったよ。


さて、こっからはネタバレありです。お気をつけください。
テイラーは感情の起伏が激しくて、怒ったり泣いたり忙しかった。でも人間、このままだと死んでしまうかもしれないと思うと、いろんな感情が湧きあがってくるんだろうね。ころころ変わる感情を、剛はとても自然に表現していたと思います。標高が高いのに、大声だしたり興奮したりすると、酸素が足りなくなるのね。それがわかってるのに、テイラーは大声で「ちくしょー」とか「くそったれー」とか叫ぶもんだから、その度に気持ち悪くなって酸素吸って、気持ち悪いことにも「くそやろー」と怒って、学ばねえ男だな落ち着けよと思ったりもしたけど、まあ無理だよな、死にそうなんだから。そういう判断も出来ないくらいがけっぷちなんだよね。
セットは大きな氷の崖です。2階席と同じくらいの高さのところに、人が2人座って動けるくらいの狭い足場があります。ハロルドは足を怪我しているので、その代わりにテイラーが上に登って足りない道具を取りに行ったりするんだけど。テイラー剛は腰にロープをつけて、氷山に棒をぶっさして上へ上へと登っていくわけよ。シーンでは2〜3回登るところがあるんだけど、その身軽さと言ったらないよね。すごいぜ。超練習したんだろうな。
んで、1回足場のないところに落ちてくるシーンがあるんだけど、すんごいびっくらした。「うわー」って落ちてきて、ロープ1本にしがみついて持ちこたえるのね。そのときにさ「はろるどぉ〜〜うわぁ〜〜〜ん」って子どもみたいに泣き出すんだけど、「危ない!」って思いながら「しっかりテイラー!」って思いながら「ハロルドなんとかして〜」って思いながら。同時に「泣く剛かわええ。子どもだ子ども。ふひ〜んって泣いてる。」とうっかり萌えてしまったなんて内緒ですよ。
追い詰められた男2人の会話なんで、下ネタ満載です。でも、そこがすごいリアルなんだよね。女2人が遭難しても、ああはならないよな。生きるか死ぬかの瀬戸際で、すげえくだらない下ネタを話し出すハロルドには笑わされた。
なんとか2人で下山する方法を考えて頑張るんだけど、道具が足りなかったり雪崩がやってきてリュックが落ちちゃったりして、最終的に2人で下山は絶望的になります。そんなときにハロルドから提案された「テイラーだけが下山する」という選択肢。テイラーはそれを頑なに拒むんだけど、拒み方もいろいろなのね。怒ってみたり、泣いて「…やだ…」って言ってみたり。その感情の移り変わりも、テイラーの心境を語ってくれる。「友達を置いてはいけない」「ハロルドを見捨てた罪悪感を背負って生きていくのはごめんだ」というテイラーと、「自分の分まで下山をして生きてほしい」「生きて、自分の妻と子どもに自分がいつまでも2人を愛していると伝えてほしい」というハロルド。ここのやりとりは、子どものようになってしまったテイラーと、すべてを受け入れて悟りを開いた大人のハロルドが対照的で、見ていて辛かった。ハロルドが冷静になればなるほど、ハロルドの死が近づいていくのがわかるんだよね。
結局、足を怪我したハロルドを残してテイラーは一人下山するわけです。ここが意外だったの〜。まあ確かにどうしようもないんだけど、まさか2人が分かれるなんて。なかなか踏ん切りがつかないテイラーを「いけ!」と大声で後押しして下山させたハロルドが、いざ独りになると声を殺して泣く姿が切なかった。ここの堤さんの演技はすごい。一人ぼっちになって向き合う静かに迫ってくる死は、どんなにこわいものか。物語はそこで終わります。

泣きじゃくるテイラーをハロルドが慰めて諭すシーンがあるんだけど、そのときのハロルドの顔がものすごく優しい顔をしてるのよ。テイラーもハロルドを信頼しきった顔をしてるのよ。そこがさ、堤くさなぎと重なるんだよね〜。今回1番ぐっときたシーンでしたよ。


カーテンコール。3回登場してくれました。1回目は2人ともテイラーとハロルドの顔。まだ勇ましい表情をしてました。2回目もまだ、強そうな男の顔。3回目、剛はやっと目を細めて笑ってくれて「あ、剛に戻った」と思いました。

次の観劇は20日(土)です。また違った表情を見せてくれるだろうし、感想もまた違うだろうな。とりあえず、1回目の感想でした。