テレビで速報が入った頃には、もう仕事を始めていました。子どもたちが帰って、やれやれと思って携帯を開いたらものすごいメール。「どうしよう!」「元気だして」「大丈夫?」どのメールも意味がわからなくて、そのまま会議が始まってしまいました。
パソコン室でネットにつないで事件の詳細をしったのは夕方4時ごろ。もうあらかた終了したころだったんだよね。子どもが帰ったあとでよかったなぁとつくづく思います。あれを授業中に知ったと思うと、おそろしいですね。


なにが1番辛かったって、子どもたちが笑いながら剛の話をしているのを聞いたときでした。子どもは普通に「先生、くさなぎつよしって知ってる?つかまったんだよ」なーんて言ってくるし。もちろん子どもに悪気はないし、あれだけニュースになってんだから話題に出るのは当たり前なんだけど。必死に作り笑顔で「知ってるよーびっくりしたねー」と返した気がします。その後、トイレに直行して吐いたけどね。剛がつかまったって事実を、私は受け止め切れなかった。


剛にはまって10年強。あんなにずっと剛のことばかり思ったのも初めてだったんじゃないかな。今なにしてるかな、体調はどうかな、精神的に参ってないかな、少しは立ち直ったかな、毎日剛のことばかり考えては、自分の中の剛の大きさを実感した。仕事を始めて忙しくなって、なんとなく少しずつ離れていくのかな、なんて思ってたけど。自分の中のくさなぎつよしはこんなに大きなものだったんだと、剛がいないと私の人生はなんて退屈なものになるのかと、痛感させられた。


あれから1年。強くなって、輝きを増して、わたしたちの前で笑う剛を当たり前のように見られる日が、こんなにも素晴らしいことなんだと思い知らされました。剛はたくさん傷ついて、たくさん涙を流して、たくさん悩んで、そして帰ってきてくれた。逆風を覚悟で、たくさんのリスクを背負って、この世界に帰ってきてくれた。彼が戻ってきてくれたことを、心から幸せに思います。また、剛に会えてよかった。


あの1ヶ月を、剛は忘れないでしょう。わたしも忘れません。たくさん悩んでたくさん泣いて、たくさん剛を愛した1ヶ月。今となっては、懐かしく思い出せますね。




この事件の2日後、参観日でした。ご飯も食べれず、吐き気と頭痛が止まらず、ろくに睡眠もとれないまま親の前に立って新年度1発目の授業をした。必死に笑顔を作って、なんとか踏ん張った。
明日は今年1発目の参観日です。この1年でわたしは強くなったはず。新しい保護者に不安は尽きないけれど、また一つ乗り越えていきたいと思います。